野尻佳孝


1972年東京都出身。明治大学政治経済学部卒業。大学在学中は体育会ラグビー部に所属。卒業後、住友海上火災保険株式会社(現三井住友海上火災保険株式会社)に入社し、1998年、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズを設立。現在は同社代表取締役会長として、「人の心を、人生を豊かにする」を企業理念として掲げ、ウエディング業界の最先端を駆け抜けている。



――明治大学で最も印象に残っていることは何ですか。
ラグビーですね。大学の四年間はずっとラグビー一筋でした。
なので、それ以外に印象深いこと、というのは実はそんなにないのですが…
ただ、明治大学で良かったな、と今になって改めて思います。
自分のルーツを辿る中で、たまたま「個を強くする」という明治大学の教育理念を知りました。
僕自身も「個が強くならないと世の中は豊かにならない」と考えているので、
明治大学の教育理念はいいなと感じました。
やはり個が強いから、団体が強くなるわけですし、いくら団体をつくったところで、
個が弱かったら、団体は強くならない。これは政治もスポーツも企業も同じだと思います。
在学中に深く考えたことはなかったのですが、
明治大学の教育には凄く素晴らしい理念が宿っていることを認識するようになりました。
今、自分に根付いている考え方のベースは明治大学で学んだことにあるのだと思いますし、
これからの世の中では、一人一人が、どれだけたくましくなるのかが大事な時代だと感じています。


――ラグビーから学んだことは何ですか。
恩師であるラグビー部の北野監督から、「前へ」ということと「ひとりでは何もできない」という
ふたつのことを学びました。
ひとつ目の「前へ」は、どんな試練が目の前に現れても
とりあえず前に進んで行かなければいけないということです。
ラグビーはボールを後ろに回しながら前へ進まないといけない矛盾したスポーツです。
アメフトや野球やサッカーは、ボールを前に前に進めて、点を稼いで勝ち負けを決めるのですが、
ラグビーは前へ少しでもボールを出したら、そこでアウトになってしまう。
そういった意味では、社会人になってから仕事でもプライベートでも色々な問題がある中で、
それを乗り越えようとする忍耐力や精神力を、明治大学ラグビー部から学ぶことができました。
ふたつ目は、ラグビーの教えでもある、one for all, all for one、
何事もひとりではできないということです。
ラグビーは1人のスーパースターがいるだけでは勝てないスポーツです。
他のスポーツは1人キーマンがいれば点を取れるものも多いのですが、
ラグビーは1人スーパースターがいても、残りの14人のレベルが達していないと
どうしてもそのチームは勝てません。
ゼッケン番号1番から15番までに色々な役割があって、
誰か1人でも欠けていたらそのチームは良いラグビーができないけれど、
誰か1人が困っていたら他の14人が補っていくこともできる。
これらがラグビーから学んだことで、僕が社会に出てすごく役に立っていることです。
今、社員が2,000人いる会社の経営者という立場にいますが、自分だけが自分だけがと思わず、
やはり「目の前の社員たちがいての自分である」という意識を持つようにしています。



――なぜこの仕事を始めようと思ったのですか。
「人を喜ばせることが大好き」というのが原点です。
僕がこの仕事を始めた頃はまだまだ「結婚式は決まりきった儀式」であり、
流れ作業のような進行がほとんどでした。
ご新郎ご新婦にとって大切な方々が一堂に集まる一日を、もっと意味のある、
心に残る時間にできる、結婚式を通してもっと大勢の人を喜ばすことができる、
そう思い新しいウエディングスタイルを創出してきました。
また、40歳を過ぎてこれまでを振り返ってみたとき、
自分自身に宿っている価値が4つあることに気づきました。
独自の発想で新しいことを生み出す「独創」、様々な物を組み合わせてイノベーションする「革新」、
人を喜ばせたり人を助けたりする「貢献」、最後に全てにおいて大切な「誠実」。
僕はこの4つをこれまでずっと大切にしてきました。
そして今の仕事は、自分の実体験で大切にしてきた価値に非常にマッチしているなと思っています。
自分が大切にしていることをうまく活かせる仕事がたまたま結婚式だった、ということです。


――仕事において大変なことをどのようにして乗り越えられてきたのですか。
高い志を持つことです。
自分もある程度の年齢になってこれまでを振り返ってみると、
どんな困難にぶつかっても、志次第だったのかなと思います。
志が低かったり、なにくそという精神面の強さがなかったら、山谷乗り越えられなかったと思います。
あとはやはり「前へ」という姿勢でしょうね。
会社にとってつらいことが起きたときこそ、
前へ行こうという姿勢を自ら先頭をきって見せるようにしています。



――この仕事をしていて感動したことはどんなことですか。
たくさんあります。最近だと社員がスペシャルオリンピックス(知的障害のある人達の自立や
社会参加を目的に設立された国際的なスポーツ組織)の大会でメダルを取ったことですね。
その時は本当に嬉しかったです。
あとは、日々の取り組みに対するお声をいただいたときです。
お客様のお声や、ご近所の方々のご声援、
お取引先の方々の「テイクアンドギヴ・ニーズと仕事ができて嬉しい」という声とか。
些細なことですが、そういったことが一番嬉しいです。


――これから社会人になっていく明大生に向けてメッセージをお願いします。
今しかできないことを考えてほしいです。
僕は、学生のときにしかできないことってたくさんあると思います。
意味のないことなんて絶対にないと思うから。
だから僕は、学生たちに今しかできないことってなんだろうということを考えてほしいなって思います。
365日24時間、一分一秒たりとも後悔しない時間の使い方をするという意識を
学生のうちに持てるといいと思います。
だから、思いっきり遊ぶのでもいいんですよ。
学生だからこそできることはたくさんあるので、
ぜひ、学生のうちに色々な体験をして楽しんでほしいなと思いますね。
大学の4年間は中学校、高校と少し違って、
自分の意志で色々なことを決定できて活動できる時間じゃないですか。
それはすごく大切な時間だから、一秒、一瞬を無駄にしないで、
色々なことにチャレンジしてほしいです。